目次
ワインのマナー
食事を楽しむためのテーブルマナーは沢山ありますが、ワインそのものを楽しむマナーにはどういったものがあるでしょうか。例えばテイスティングにも一応の手順などがございます。
手順や決まり
テイスティングの際の手順はまずワイングラスを傾け色を見てから香りを嗅ぎ、次にスワリング(グラスを回すこと)をして、ワインに酸素を含ませることにより現れる香りを出現させその香りを確認し、次に口に含み味わうというものです。ですが、実際には色々なやり方をする人がおり、ソムリエコンテストなどを見ていてもわかりますが、鼻をかなりワインに近づけ液面に鼻がつくほどの人もいれば、グラスの縁くらいのところから嗅ぐ人もいます。スワリングに関していっても優しく数回まわすだけの人もいれば、激しく回す人もいます。しかし、マナーとしては液面につくほどに鼻を近づける人や激しくスワリングを行う人は卑しく見えると判断されるため原点です。特にスワリングは激しく行うことにより芳香性成分が一気に揮発するため、香りを分析するためには良いかも知れませんが、ワインそのものを味わうならば、本来の味のバランスが壊れてしまうため避けるべきです。
日本人の固定観念
ワインを語る際のマナー、例えば日本では赤ワインは肉料理に、白ワインは魚料理に、などと形式ばった考えを持つ人が多いですが、そういった考えを語るのは危険です。実際はそんな単純なものではなく、魚介に合う赤ワインや肉料理に合う白ワインもありますし、逆に赤ワインに合う魚料理や白ワインに合う肉料理があります。ワイン発祥の地グルジアでは魚介料理も肉料理も赤ワインを合わせます。そもそも日本で魚料理に赤ワインが合わないとされるのは、バブル期に流行ったボルドーワインの品種に鉄分を多く含む品種が多かったからで、鉄分が酸素にふれて酸化する時にそれにつられて収斂作用で急激に魚の脂が酸化するために生臭い香りが生まれます。例えばブルゴーニュでは池で養殖された魚を用いた料理に赤ワインを合わせますが、ブルゴーニュワインに利用されるピノノワールという品種が鉄分をあまり含まないためです。このようにワインの世界は複雑で奥深いものなので、ワインを語る際に“合わない”という否定的な言葉を使うのは、マナー違反だといえます。
香りも気を付ける
香りのマナー違反というものもあります。最近ワインの世界にも人気漫画というものがあるらしく、そういった物が流行るにつれて若い女性が試飲会に現れることが多くなりました。それそのものは大変喜ばしいことなのですが、残念ながら香水という問題が現れることになりました。特に女性用香水に多いマスカットやシトラスなどのフルーツ系の香りがするとワインの識別の際ワインの香りに香水の香りが混じってしまうことがあるのです。しかし最近では女性だけでなく男性用の整髪料にもリンゴやシトラス系の香りを持つものがポピュラーになっているので、男性も注意が必要です。そういった外からの香りは、テイスティング結果を狂わすだけでなく生産者の努力の結晶であるワインの評価にも響いてしまうので、香りのマナーにも気をつけましょう。
「イタリアワイン」
まるで時間が止まったかのような美しい田園地帯が広がるイタリア中央部トスカーナ地方。北部ピエモンテ州の繊細で柔らかいワインに対して、ここでは力強く凝縮味あふれた赤ワインが中心に作られており、ピエモンテ州のワイン同様、世界中のファンを楽しませています。またイタリア南部やサルディニア島などでは、近年EUの投資により整えられた畑と醸造所、そこに若手ワイン醸造家の情熱が加わり、素晴らしいワインが続々と登場し注目度がアップしています。
これらの土地で作られるワインのラベル表示として、有名なワインを取り上げてみましょう。
<イタリア中央部のワイン>
トスカーナToscana州
イタリアワインを語る上で絶対押さえておきたいのがトスカーナ州。沿岸部では主に白ワインが、そして内陸部では骨格と気品のある赤ワインを生むサンジョベーゼSangeovese種を栽培し、世界が注目する赤ワインが誕生しています。
『スーパートスカーナSuper Tuscan』
イタリアの原産地統制名称DOCの規定から外れた作り方をしているため、一般的なテーブルワインとして販売されたものの、その質の高さが評判になり大いに高額の値が付いたワインでワイン愛好家が常にその動向に注目するワイン。もともとは、サンジョベーゼSageovese種とフランス品種カベルネ・ソーヴィニヨンCabernet Sauvignon種をブレンドしてできたワインが最初で、それらを「スーパータスカン」と呼びます。現在では、メルローMerlot種、シラーSyrah種などとのブレンドもあり、トスカーナToscana IGTとして販売されています。
通常は独自のワイン名(例:サッシカイアSassicaia, ルーチェLuce)が一番大きく表示されます。
キアンティChianti DOCG
イタリアワインと言えばこれ。輸出量が一番多い赤ワインで藁に包まれた丸い形のボトルのもの等が観光客にも人気ですが、そういうものの品質はそれなり。質のより物も多くありますが実際大きなばらつきもあるので注意が必要です。フランス・ボルドー品種のカベルネ・ソーヴィニヨンCabernet Sauvignon種、メルローMerlot種などの国際品種をブレンドした上質なものもあります。
キアンティ・クラシコChianti Classico DOCG
歴史的にキアンティの栽培地だったクラシコ地域で、通常のキアンティよりも味わい深く品質の高いの赤ワインを生産しています。品質が協会に認められたワインには、ボトルの首の部分に黒い鶏のシールが貼られます。
*また7つの小さな地区は(例:ルフィーナRufina, コッリーネ・ピザーネColline Pisane、コッリ・アレティーニColli Aretini、モンタルバーノMontalbano、コッリ・セネージColli Senesi、モンテスペルトリMontespertoli、コッリ フィオレンティーニColli Fiorentini)キアンティ・クラシコではありませんが、普通のキアンティより上質でキアンティ・クラシコと同等、あるいはそれ以上のクオリティのものもあり人気があります。
ブルネロ・ディ・モンタルチーノBrunello di Montalcino DOCG
サンジョベーゼSangeovese種から作るイタリアで一番長い熟成期間を定められた力強く、エレガントな赤ワイン。
ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノVino Nobile di Montepulciano DOCG
ブルネロ・ディ・モンタルチーノと似たスタイルの赤ワイン。
ヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノVernaccia de Sangimignano DOCG
キアンティ・クラシコ地区で作られる白のDOCG。
マルケMarche州
ヴェルディッキオ・ディ・カステリ・イェージVerdicchio dei Castelli di Jesi DOC
鉱物的な感触のある、昨今非常に質が向上している白ワイン。
ウンブリアUmbria 州
オリビエートOrivieto DOC
ピッザリア等では必ずある一般的な白ワイン。
ラッツィオLazio州
フラスカーティFrascati DOC
ローマ市民に愛され続けている一般的な白ワイン。
アブルッツォAbruzzo州
モンテプルチアーノ・ダブルッツォMontepulciano d’Abruzzo DOC
つよいタンニン、酸味、アルコールを備える力強い赤ワイン。
<イタリア南部のワイン>
トスカーナやピエモンテのワインより格段に少ない知名度ながら、近年非常に注目を浴びている地方。びっくりするようなエキサイティングなワインが生まれています。オーストラリアやカリフォルニアからワイン醸造のプロがその土地を求めてやってくることでも話題になっています。
カンパーニャCampania州
タウラジTaurasi DOCG
ブドウの王様と呼ばれるアリャーニコAglianico種から強いタンニンと酸味のあるワイン。
プーリアPulia州
サリーチェ・サレンティーノSalice Salentino DOC
主にネグロアマーロ種から作られる風味豊かで高いアルコール度と調和がとれた赤ワイン。熟成期間が長めのリゼルバRiservaの中には、非常にクオリティの高い柔らかく凝縮した味わいのものを作る生産者もいます。
シチリアSicilia州
シシリアSicilia IGT
シシリア島で作られる地ワイン。ネロ・ダヴォーラNero Tavola種などの地元品種とフランス品種のシラーSyrah種とのブレンドで、非常にコストパフォーマンスの良いワインを作り出している。今後、DOC,DOCGが多く増えることが予想される。
サルディニアSardegna州
カンノーナウCannonau種(グルナッシュGrenache種)から、パワフルで凝縮した味わいの素晴らしい品質のワインが続々生産されています。今後がさらに楽しみな産地。通常、カンノーナウ ディ サルディニアCannonau di Sardegnaという名前かワインブランド名がラベルに入ることが多いようです。
クリエイティブな遊び心あふれるワイン産地が熱い!
世界のワイン愛好家の注目を絶やさないイタリア・トスカーナ地方。人と違ったものを作ってみたいというイタリア人気質が、個性あふれるスーパートスカーナを生んだといわれています。また、ガブ飲み専用の「お食事の友」的なテーブルワインを作ってきたイタリア南部ですが、このところ、イタリア南部、島部で作られる質の良い魅力的なワインにもワイン愛好家たちはたいへん注目しています。まさに「コスパがよい!」とはこのこと。フライングワインメーカーと呼ばれる、外国からのワイン醸造者が近代醸造技術が用い手がけられるようになったイタリア南部にはそんな質の良いワインがたくさん誕生しています。太陽の香りのする元気な赤ワインを日常に持ち込んでみたい方はぜひぜひこの地域のワインを探してみることをお勧めします。
ピエモンテ州はイタリア中央部のトスカーナと並ぶイタリア屈指の高級ワイン産地で、イタリアワインの王様と呼ばれるバローロ Barolo 他の優れた赤ワインをネッビオーロNebbiolo種 から作っています。同じく北西部のロンバルディア州、リグーリア州でも良質の赤ワインが、またコルテーゼCortese種、アルネイスArneis種から爽やかな白ワインが作られます。
また北東部では、ヴェネチアのあるヴェネト州、さらに北のオーストリアのトレンティーノ・アルト・アディジェ州、またオーストリア、スロベニアと国境を接するフリウリ ヴェネツェア ジュリア州は一般的なイタリアのイメージとは違いとても中央ヨーロッパの影響を受けている地方。この地方で作られているワインは国内向けのものが多くあまりお目にかかる機会はないかもしれませんが、気軽なイタリアンレストランなどで見かけるよく知れたワインが作られています。
以下に代表的なDOCGワインをご紹介しましょう。
ピエモンテPiemonte州のワイン
バローロBarolo
長期熟成させるイタリア最高峰のワインの一つ。
バルバレスコBarbaresco
バローロと似たスタイルのエレガントなワイン。
ランゲLanghe
バローロ、バルバレスコに似たタイプのワインなのにこれらよりも低価格でお買い得。
バルベーラ・ダスティ Barbera d’Asti
酸味が高くタンニンが少ない赤ワイン。トマト料理に最適。
ドルチェット・ダルバ Dolcetto d’Alba
バローロ等と同じ土壌でドルチェットDolcetto種から作った赤ワイン。
ロエロ・アルネイスRoero Arneis
アルネイス種から作られるモモやアプリコットの香りのする白ワイン。
ガヴィGavi
コルテーゼCortese種から作られたさわやかな白ワイン。シーフードに最適。
フランチャコルタFranciacorta
フランスのシャンパーニュと同じ方法で作られた質の良いスパークリングワイン。近年、非常に人気が出てきています。
ヴェネトVeneto州
ソアヴェSoave DOC
イタリア国内で非常に生産量が多い白ワイン。最近、質が上がっているものが多い。
ソアヴェ・スペリオーレSoave Superiore DOCG
急斜面で栽培されているクラシコ地区で作られたこのDOCGワインは、強い花の香りがする優良なワインを生産しています。
フリウリ・ヴェネツィア・ジューリアFriuli-Venezia Giulia州
コッリオCollio DOC
赤、白があり、ラベルに使われているブドウ品種の名前を表示していることがあります。
ヴェネトVeneto州
ヴァルポリチェッラValpolicella DOC
イタリア国内で量的に重要な赤ワイン。軽くて飲みやすく、加工肉等の前菜にぴったり。
ヴァルポリチェッラ・クラシコValpolicella Classico DOC
クラシコ地区からやや上質なヴァルポリチェッラを生産しています。
アマローネ・デラ・ヴァルポリチェッラAmarone della Valpolicella DOCG
フルボディで、チョコレートやダークラムなどの強い香りがするワイン。
レチョート・デラ・ヴァルポリチェッラRecioto della Valpolicella DOCG
甘口ワイン。ブルーチーズに合う。
ワインの王様と、裕福なイタリア北部の人たちの日常ワイン
イタリアが誇るピエモンテ州のバローロ。かなり長い間の熟成期間が必要なパワフルで味わい深く複雑な風味を魅せてくれる赤ワインが伝統的に作られていましたが、近年では熟成期間が短く新鮮な果実の香りがするバローロが作られるようになりました。これにより価格も下がり、かのバローロにもアクセスしやすくなったようです。世界的にワインがフルーティーで軽快なスタイルのものがはやっている昨今ですが、バローロのような王様のスタイルが大きく変わってしまったことに苦言を呈するオールドファンもたくさんいるようです。王様のスタイルが変わるという一大事のあと、次はこの静かなイタリア北部にどんなスターが注目を浴びるようになるでしょうか。落ち着いたヨーロッパのエスプリを存分に感じるエレガントなワインを作るこの地域から、これからも目が離せません。
古代ギリシャ人が「ワインの地」と呼んだイタリアには紀元前800年頃にワインが伝えられ、現在でもフランスと並んで世界最大のワイン生産国となっています。料理に合うワインが必ず見つかるという種類豊富なイタリアワインから、ラベルの読み方を覚えてお気に入りのワインを探してみましょう。
ワインの格付けを表す表示
-保証付き原産地統制呼称ワイン
ディノミナツィオネ ディ オリジネ コントロラータ エ ガランティタDenominazione di Origine Controllata e Garantita (DOCG)
原産地統制呼称の中で、農業省の各種審査に合格したワイン。ボトルの首の部分にピンクの認定シールが張られるのでわかりやすい。
-原産地統制呼称ワイン
ディノミナツィオネ ディ オリジネ コントロラータ Dinominazione di Origine Controllata (DOC)
フランスのACに当たる格付け。現在300ほどのDOCワインがあるが、今後単純化されていく予定。
-地域特性表示ワイン
インディカツィオネ ジオグラフィカ ティピカ Indicazione Geografica Tipica (IGT)
地酒の意味あいの強いワイン。法律的には上記2つのワインより低い位置にあるが時に法律に沿わず非常に個性的で秀逸なワインをもあり、そういうもの非常に高値で取引されています。
イタリアワイン名名付け3つのパターン
イタリアワインの名前の付け方は、基本的に以下の3つの方法のいずれかであることが多い。
ー地名
例:バローロ Barolo
ー品種名+地名(d‘)
例:バルベーラ ダスティ Barbera d’Asti
(アスティというところでバルベーラ種を使って作ったワイン)
ー品種名+地名(di)
例:トレビアーノ ディ ロマーニャTrebbiano di Romagna
(エミリア=ロマーニャ州でトレビアーノ種を使って作ったワイン)
ラベル表示されるその他の重要な用語
クラシコClassico
ソアヴェSoave, キアンティChianti、 ヴァルポリチェッラValpolicellaの中で、最も優良な地域で作られたワインに表示されます。
リゼルバRiserva
高めのアルコールと長期熟成をうたうこともあるが、平均的なワインのラベルにつくこともあるので注意。
パッシートPassito
乾燥されたブドウから作ったワイン。乾燥の度合いによって残留糖分も異なるので、甘さの度合いも異なります。例えば、アマローネ・デラ・ヴァルポリチェッラAmarone della Valpolicella DOCGは辛口、フルボディ、高いアルコール度で、レチョート・デラ・ヴァルポリチェッラRecioto della Valpolicellaは甘口で軽快なワインとなるので注意。
ーその他の用語
アボカートAbboccato 半甘口、フルボディ
アマビーレAmabile 半甘口
アナータAnnata ヴィンテージ
ビアンコBianco 白
ボッテBotte 小さい樽
ボッティリアBottiglia ボトル
キアレットChiaretto 濃いロゼ
クラシコClassico そのDOCの中心地
コンソルツィーオConsorzio 品質保証協会(認定されると、ボトルの首の部分にピンクのシールが貼られる)
ドルチェDolce 甘口
フリッツァンテFrizzante 軽い発泡性
メトードクラシコMetodo classico, メトード トラディツィオナレMetodo tradizionale 伝統的製法で製造したスパークリングワイン
パシートPassito, パシータPassita やや乾燥したブドウから作った力強い甘口ワイン
レチョートRecioto 一部が乾燥したブドウから作ったワイン
リゼルバRiserva 一定の期間小たるで熟成させたDOCワイン
ロザートRosato ロゼ
ロッソRosso 赤
セッコSecco 辛口
セミセッコSemi secco やや辛口
スプマンテSpumante スパークリングワイン(作り方は不明)
ヴェンデミアVendemmia ヴィンテージ
ヴィーノ ノヴェーラVino novella 瓶詰一年以内の新酒
ヴィヴァーチェVivace やや発泡性あり
身近なイタリア料理と楽しむ奥の深いイタリアワイン
5000はあると言われるイタリア原産のブドウ品種。世界を見回しても他には作っていないブドウ品種ばかりで、ますます選ぶのに大変!とナーバスになりがちなのがイタリアワイン。ですが、好きなワインを絞り込むのが難しいぐらい、低価格でとてもおいしいワインに出会うことも多々あるのがイタリアワインでもあります。イタリアワイン名の表示方法は基本的に上にご紹介した通りなので、それに沿ってだいたいの中身を想像することは可能です。イタリア北部は割と繊細な、中部は力強い、そして今注目の南部、島部はその個性派ぞろい、あとは馴染みのあるイタリアブドウ品種を少しずつ増やしていくのはいかがでしょうか。いつかきっとお気に入りのワインに出会えるのでは?身近で気軽なイタリア料理と一緒に飲みたくなるワインが見つかるはずです。