19世紀中ごろにはすでにワイン用ブドウの栽培を行っていたものの、近年特に、各種テースティングイベントで注目されるようになってきたアメリカ合衆国のこの2州。特にオレゴン州のピノ・ノワールPinot Noir種はワイン専門家の評価も非常に高く、手に入れるのが難しくなってきました。本家フランス・ブルゴーニュのピノ・ノワールと比べてと引けを取らないどころか、かなりの出来栄えのものが多くしかも今のところはお買い得。手に入らなくなるわけです。またワシントン州は、そのやせた土地で興味深いワインを生産するようになってきました。
ワイン産地としてはまだまだ一般的には知られていないこのアメリカの2州についてご紹介しましょう。
目次
オレゴン州、ワシントン州で栽培される主なブドウ品種
―赤ワインー
ピノ・ノワールPinot Noir種
メルローMerlot種
―白ワインー
ピノ・グリPinot Girs種
シャルドネChardonnay種
リースリングRiesling種
オレゴン州、ワシントン州のワインの主な産地
アメリカブドウ栽培地域(American Viticultural Area=AVA)としてラベルに地名を表記できる産地は下記のとおり。
オレゴン州
・ウィラメット・ヴァレーWillamette Valley AVA
愛好者や評論家から絶大な称賛を得ており、オレゴンは今や世界でも一級のピノ・ノワールPinot Noir種生産地域としての地位を確立しました。さらに良質のものを求めて生産者は奮起し、消費者は手に入れようと必死になっています。それがオレゴン州・ウィラメット・ヴァレーのピノ・ノワールPinot Noir種。そのエレガントで繊細な味わいは世界中のピノ・ノワールファンを虜にしています。リースリングRiesling種、シャルドネChardonnay種、ピノ・グリPinot Grigeo種の評価も高くなってきています。アルコール度数はカリフォルニアなどに比べると13%台の比較的低めに作られるものが多く、冷涼地独特の力強さよりも上品で繊細は味わいを持つワインが作られています。以下は、小区域のAVAとしてラベル表示がされていることがあります。
ダンディー・ヒルズDundee Hills AVA
マクミンヴィル McminnvilleAVA
リボン・リッジRibbon RidgeAVA
ヤムヒル・カールトン・ディストリクトYamhill-CarltonAVA
サザン・オレゴンSouthern Oregon AVA
ウィラメッテより暖かな気候のため、ここではシラーSyrah種、メルローMerlot種、カベルネ・ソーヴィニョンCabertnet Sauvignon種、シャルドネChardonnay種などが多く栽培されています。
その他の主なAVAは下記の通り。
アムクワ・ヴァレーUmpqua AVA
ローグ・ヴァレーRogue ValleyAVA
ワシントンWashington州
コロンビア・ヴァレーColombia Valley AVA
白はリースリングRiesling種やシャルドネChardonnay種、赤はカベルネ・ソーヴィニヨンCabernet Sauvignon種やメルローMerlot種を主に栽培しており、カリフォルニアワインと比べるとエレガントさがあるワインと言われています。
いくつかのブティックワイナリーでは、ワイン産業に絶大な影響良力を持つパーカーポイントで非常に高いポイントを付けられたワインもあります。リースリングRiesling種、ゲヴュルツトラミネールGewurtztraminer種、シャルドネChardonnay種。またアイスワインの生産も行っています。
その他の主なAVAは下記の通り。
ヤキマ・ヴァレーYakima Valley AVA
ワラ・ワラ・ヴァレーWara Wara Valley AVA
スネーク・リバー・ヴァレーSnake River Valley AVA
繊細でエレガント、なおかつ妖艶な魅力のピノ・ノワールファンは急いで!
ご紹介したオレゴン州のピノ・ノワールは、その冷涼な気候のもと、近年、その品質が非常に向上し、世界中のピノ・ノワールファンの注目の的となっています。とくにクラフトワークのようなこだわりの逸品を作る小さな生産者のものはなかなか手に入らなくなっているのが現状。そして近年はなかなか高価なお値段で取引が行われるようになっています。ただし、ピノ・ノワールのふるさとブルゴーニュで同じぐらいの品質のものを同じお値段で買えるかどうかは微妙といったところ。まだまだコストパフォーマンスはオレゴンワインの方がいいかもしれません。有名になりすぎる前にネットなどで取引をしている評判のいい生産者を見つけ出しておくのも面白いかもしれませんね。
ポートワインで知られるポルトガルですが、スティルワインと言われる普通のワインも、過去数十年の醸造法の近代化、マーケティングの充実で近年は良質のワインを国内外に出荷しています。ポルトガルのお食事は日本人の口に合いやすいともいわれていますので、どんなものがあるか探ってみましょう。
ワインの格付け表示
(いずれも1が伝統的名称、2はEUの登録されている別名表記)
-保護原産地呼称名称ワイン
1デノミナサン・デ・オリジェン・コントロラーダDenominação de origem controlada(DOC)
2デノミナサン・オリジェン・プロテジーダDenominação de Origem Protegida(DOP)
-保護地理的表示ワイン
1ヴィーニョ・レジョナルVinho regional
2インディカサン・ジェオグラフィカ・プロテジーダIndicacao Geografica Protegida(IGP)
ポルトガルワインのブドウ品種表示
ポルトガルは特有の地元ブドウ品種が多く、他の国では国際品種が活躍している中、現在でも地元品種が多く使われています。
―赤ワイン用品種
トゥリガ・ナショナルTouriga Nacional
ポルトガルを代表する品種。色と香りが濃厚でタンニン豊富。ドウロ、ダン地方で作られています。
ティンタ・ロリスTinta Roris
スペインのテンプラニーリョTempranillo種。深い色調とタンニンを備えるワインができるほか、軽めのワインを作るところもあります。同じくドウロ、ダン地方で栽培しています。
カステランCastelao
セトゥーバル半島やパルメラで洗練された赤ワイン。
バガBaga
バイラーダ地方では主要品種、また別の地方ではブレンドに使われ、近代的な栽培と醸造法によりフルーティーでソフトなワインができるようになった。
トリンカデイラTrincadeira
アレンティージョ地方で、濃い色調の力強くスパイシーなワインを作ります。
―白ワイン用品種
アリントArinto
ヴィーニョベルデやアレンテージョのブレンドとして使われ、爽やかな果実香味と酸味。
ロウレイロLoureiro
ライトボディの爽やかなワインを作ります。同じくヴィーニョ・ヴェルデに使われます。
アルヴァリーニョAlvaniho
スペインのアルバリーニョと同じ、爽やかな白ワインの生産に。
その他のラベル用語
リゼルヴァReserva
DOCワインに使われる。アルコール度の規定等がありテースティングに合格したワイン。
ガラッフェイラGarrafaira
DOCとIGPを持つすべてのポルトガルワインに適用。上記、リゼルヴァと同様の条件の他、熟成期間の規定もある。
アデガAdega 醸造所
アデガ コオペラティヴァAdega cooperativa 生協醸造所
ブルットBrut 辛口スパークリングワイン
カスタCasta ブドウ品種
ドーチェDoce 甘口
ガフェイラGarrafa ボトル
キンタQuinta 醸造所
セッコSeco 辛口
ティントTinto 赤
ヴェルデVerde 緑という意味、若いワインを意味
ヴィーニョVinho ワイン
生産地名
ヴィーニョ・ヴェルデVinho Verde DOC
伝統的なものは、薄いレモン色で酸味が強くアルコール度も低め。アルバニーニョAlbaniho種という品種や特定の地域の地名が記載されている場合はアルコール度がやや高め。伝統的に少し泡がたつような作りになっていて更に爽やかさが演出されています。
ドウロDuoro DOC
この古いブドウ産地では、ポートワインを作るブドウ品種から、生き生きした酸味と果実風味のする赤ワインが作られています。白ワインもさわやかな風味ワイン。
ダンDao DOC
繊細で熟した果実のアロマがし、柔らかなタンニンと強い酸味のバランスのとれた赤ワイン。白ワインは爽やか且つしっかりとしたボディ。
バイラーダBairrada DOC
以前は力強すぎる感のある赤ワインでしたが、現在は生産技術の発達によりポルトガル地元品種からフルーティーで軽快なワインや長期熟成の可能なものまで様々なワインが作られています。バガBaga種を50%以上含むものはクラシコClassicoと呼ばれます。また、メルローMerlot種、ピノ・ノワールPinot Noir種といった国際品種の栽培も始めています。またスパークリングワインや、ビカルBical種を使った高品質の白ワインの産地としても知られています。
リスボアLisboa IGP
近代的な醸造技術を用い、果実風味豊かな深い色調の爽やかな赤ワイン。白ワインもエレガントなものが出ています。
テージョTejo IGP
ポルトガル地元品種から爽やかな白ワインが作られています。また赤ワインは、地元品種とともにシラーSyrah種などの国際品種も栽培され始めています。
ペニンスラ・デ・セトゥーバルPeninsula de Setubal IGP
多くの国際品種とポルトガルの地元品種からワインをつくっています。
アレンテージョAlentejo DOC、アレンテジャーノAlentejano IGP
ここ2,30年で大きく成長した広大なワイン産地で、ポルトガル地元品種とシラー種などの国際品種のブレンドでエレガントで深い色調の果実香味の強い赤ワインを作っています。また白ワインは、アリントArint種などの地元品種から蜂蜜の香りのする芳醇なワインになります。
同じく注目のイベリア半島の現代的ワイン!
ヨーロッパ内で、地元品種を使い長い地元でのみ飲まれてきたややぼやけた感のあるワインが、この数十年、栽培法醸造法の劇的な躍進で見事に現代的なスマートなワインに代わっています。その生産地のうちの一つがこのポルトガル。もともと多くの地元原産品種が潜在的にすばらしいワインを作る能力を備えていたのは確かで、EUの支援により現代技術をワイン醸造に取り入れたことで地元原産品種の本来の力を発揮し、品質が花開いたという印象を受けます。ヨーロッパ内ではすでに大きな話題となっているこういったポルトガルワインはお手頃な価格で手に入るのですでに話題騒然。主に原産地名と一緒にDOCという法律用語が書かれたワインには大きく期待できるはずです。
チリワイン
南北に広がるチリのワイン産地は山岳地帯の気候の影響も受け、各栽培地の気候には大きな違いがありブドウの出来、そしてワインのスタイルに大きく関わってきます。日本への輸入量も跳ね上がっている有名なワイン産地についてご紹介します。
コキンボCoquimbo地方
以前はテーブルワインやピスコと呼ばれるブランデーの産地だったこの地域では、かなり標高の高い場所でブドウ栽培がおこなわれています。
エルキElqui
ソーヴィニヨン・ブランSauvignon Blanc種、シラーSyrah種で評価されています。
リマリLimari
チリで最高のシャルドネChardonnay種を生産しています。
アコンカグアAconcagua地方
アコンカグア・ヴァレーAconcagua Valleyはチリでも最も古いワイン生産地の一つ。1990年代に入ってやっとインフラの整備が行われブドウ栽培が始まった土地。
アコンカグアAconcgua地域
現在、チリのシラーSyrah種の評判が非常にいい地方。カルメネールCarmenere種とカベルネ・ソーヴィニヨンCabernet Sauvignon種も栽培しています。これらの赤ワインは芳醇で熟した果実風味、アルコール度、タンニンも強い傾向にありましたが、アルコール度が控えめの軽めのものを作るようになってきています。
カサブランカCasablanca地域、サン・アントニオSan Antonio地域
太平洋と山脈に挟まれており、ブドウ畑は涼しい場所に位置しているため、白ワイン用ブドウ品種の生産が盛ん。ソーヴィニヨン・ブランSauvignon Blanc種、シャルドネChardonnay種の評価が高く、特にサンアントニオ地域のソーヴィニヨン・ブランSauvignon Blancが好評。また赤ワインに関しては、カサブランカ地域のシラー種は標高の高いところでスパイシーさやハーブの香りのするワインができます。ピノ・ノワールPinot Noir種も作られています。
中央渓谷Central Valley地方
アンデス山脈から豊富な水を供給されるため、成熟しやすく安定したワインの原料となるブドウの生産をしてきました。現在は、この中の4つの地域で主に質の良いワインの生産が行われています。
マイポMaipo地域
チリのワイン産業の中心地。山脈に囲まれたこの地では、ミントの風味のあるカベルネ・ソーヴィニヨンCabernet Sauvignon種が栽培されています。
カチャポアルCachpoal
暖かいこの地では、カルメネールCarmenere種、カベルネ・ソーヴィニヨンCabernet Sauvignon種、シラーSyrah種が作られています。
コルチャグアColchagua
海の影響も受けるこの地域では、フルボディの赤ワインの評判がよく、また次々と高い評価のワイ
ナリーが生まれています。また白ワインの産地としても評判がよいようです。
クリコCurico地域、マウレMaule地域
両方を合わせてチリ最大のブドウ産地。お手頃価格のブレンドワインの産地としての地位を確立していますが、やや涼しいマウレ地域で樹齢の高いブドウの樹を利用して質の高いワインを作ろうとする動きが出てきているようです。スペイン大手のミゲル・トーレスが、スペインの高級ワイン産地プリオラートと似た土壌と気候のこの地域内にあるエンペロドラドEmpedradoを開拓し今後が楽しみな展開となっています。
南部Southern 地方
イタタItata,ビオビオBio Bio,マジェコMallecoという産地があり長い間地元で飲むためのワインを生産してきましたが、近年ではビオビオでピノ・ノワールPinot Noir種、シャルドネChardonnay種などで近代化の成果が出始めています。
またこれらの地域よりさらに南、つまり南半球のチリではさらに冷涼な地域で実験的な作付けを試みている栽培者が多くいます。こちらも今後の動きに注目したいところです。
ヨーロッパの偉大なワイン生産者が注目するチリの冷涼なブドウ産地
非常に高値で売られているスペインのプリオラートPrioratと似た土壌、気候ということで大手ワイン生産者が注目したように、フランス他のヨーロッパの国々、ニューワールドの国々のワイン生産者がチリワイン産地のさらなる能力開発を狙っています。フランスから、スペインから、イタリアから、著名なワイン生産者がチリのワイン産地に熱い視線を送っています。すでに成功して例もたくさんありますが、アクセスしやすい値段と品質、また気取りなく飲めるカジュアルさも人気の秘密かもしれません。今後は、オールドワールドの生産者だけでなく、別の国から、あるいは地元チリからどんな熱心な生産者が私たち消費者を楽しませてくれるか楽しみですね。チリワインから目が離せません。