フランスは実はワイン発祥の地ではないものの、現在もワイン産業の中心として上質ワインから日常的なワインを生産しています。そこでラベル表示に記載のあるヨーロッパワイン法ももともとはフランスのワイン法をモデルとして作られました。
フランスのワイン法の一端を知って、フランスワインのラベルを解読する手がかりにしてみましょう。
目次
厳格な規定
19世紀末にフィロクセラという害虫のためブドウ畑に歴史的な大被害を受けたフランスのワイン産業界は、それを教訓にワイン生産全体を網羅するとても厳格な規定を確立させ、産業の保護を図りました。以下にブドウ栽培とワイン醸造に関わるいくつかの例を紹介します。
これらの条件を規定通りクリアしてはじめて、ワインの品質を表す用語をラベルに記載することができます。
・生産地域…ブドウの生産地域が大きな地域から畑の区画まで非常に細かく分類。
・ブドウ品種…伝統的に栽培されてきた品種、ブレンドされる品種の割合などの規定。
・栽培法…ブドウの樹の仕立て、選定法、栽植密度等の規定。
・収穫量…ブドウの品質を大きく左右する1ヘクタール当たりのブドウの収量が決められている。
・醸造法…ブドウ破砕から瓶詰まで、各段階で規定があるところもある。
地理的表示
フランスの保護原産地呼称(PDO)- (フランス名:Appellation d’Origine Protegee ー AOP)
・アペラシオン・ドリジーヌ・コントローレ Appellation d’Origine Controlee(AOC)
原産地を表すことのできるのがこの制度。大きな地方を表すこともあれば、小さな村、畑のごく一部を表すこともあります。この範囲が狭くなればなるほどワインの質は良いということになります。例えば、大きな県ほどの地名のAOCよりも村名のAOCの方が理論上は上質ということになります。
産地の名称とともにこの文字があれば、ワイン法に基づきその地でワインが作られているということが保証されているということになります。
(例:ボルドーAC Appellation Bordeaux Controlee、ボルドー全域)
フランスの保護地理的表示(PGI)- (フランス名:Vins de Pays ー VdP)
・アンディカシオン・ジオグラフィ―ク・プロテージェ Indiction Geographique Protegee(IGP)
上記のAOCの保護原産地呼称よりも緩い規定で作られた、地酒といった感じのワイン。中には法律に縛られず緩めの規定の中で好きなワインを作った結果、そのワインが非常に上質なものになり高値で売られているというような例もあります。それまで使われていたヴァン・ドゥ・ペイVins de Paysをまだラベル記載に使用する生産者も多く残っていますが、近年はこの新しい名称を使用する生産者が増えてきました。
このカテゴリーは以下のような3つのサイズに分かれます。
‐広域 6つの広範囲な産地。(例:ヴァン・ドゥ・ドックVins de Pays d’Oc地中海沿岸部)
‐県 54の県。(例:ヴァン・ド・ペイ・デュ・ガールVin de Pays du Gardガール県)
‐地区 93の地区
(例:ヴァン・ド・ペイ・コトー・デュ・ヴェルドンVin de pays des Coteaux-du-Verdoプロバンス地方にある地区)
ヴァン・ドゥ・フランス Vin de France
以前はテーブルワインを意味するVin de Tableと表示されていました。この名称の新設により、従来テーブルワインには許可されていなかったブドウ品種の記載が許可されました。
フランスワインを表すラベル用語
Blanc 白
Brut 辛口(主にスパークリングワイン)
Cave セラー、生産所
Cave Co-operative ワイン協同組合
Cepage ブドウ品種
Chai ワイン樽の醸造中の保管所
Chateau シャトー。ワイン生産所(特にボルドー。建物が含まれる時と含まれない時がある)
Clos 壁に仕切られたブドウ畑。
Cote 丘
Coteaux 丘陵地帯
Cru 格付け(品質のよりブドウ畑、地域、村など)
Cru Classes 格付けがされたブドウ園 ( 主にボルドー地方 )
Cuve ワインの大樽
Demi Sec 半辛口
Domaine ドメーヌ。 ワイン生産所(特にブルゴーニュ)
Doux 甘口
Grand vin de… 「 …の素晴らしいワイン」の意。特に法的意義はない。
Mis en bouteille 瓶詰
Mis en boueille au chateau シャトー瓶詰
Negociant 生産者からワインを買い、熟成させ販売する業者。
Proprietaire ブドウ園、醸造所の所有者
Recoltant ブドウ栽培者
Recolte ヴィンテージ
Rouge 赤
Sec 辛口
Vendange ヴィンテージ
Vignoble ブドウ園
Vine ワイン
ワイン王者がより身近に!
フランスワインはその名声の元、ワイン法に基づいた難解なラベル表記を持ってでもワイン愛好者には愛され続けていますが、いつもワインを飲まない消費者には手に取りにくいワインであることは事実。それをニューワールドワインが、知られたブドウ品種名称、わかりやすい大衆向けブランドワイン戦略で多くの消費者へのアプローチに成功した結果、今度はワイン王国のフランスがそれを見習って、昨今はブドウ品種名等を記載した、内容を想像しやすいワインラベルを作るようになりました。上に挙げた簡単なちょっとした用語を覚えておけば、あとは代表的な産地を少しずつ頭に入れておくだけ。ワインの本場フランスワインにもっとアクセスしやすくなるはずです。