イタリア国境とスペイン国境に伸びる地中海沿岸部のこの地方のワインは、生産過剰と低品質で人気下落という経験をし、近年そこから目覚ましい品質向上を遂げた地域。現在も高級ワインから低価格の大衆向けワインまであらゆるタイプのワインを生産しています。
ブドウ品種
―白ワイン用品種―
シャルドネChardonnay種
ソーヴィニヨン・ブランSauvignon Blanc種
ヴィオニエViognier種
上記3種がIGPワインの原料として使われている。この地方でのシャルドネのスタイルは様々。
ピクプールPicpoul種
このところ増えている品種。軽くてさわやかな味わいです。
―赤ワイン用品種―
グルナッシュGrenache種
昔からこの地域で栽培されている品種で、暑くて乾燥した条件の下でもよく育ちます。
シラーSyrah種
この地域で人気のある品種。ここより北の地域のローヌ川流域のものよりパワフルな印象。
カリニャンCarignan種
タンニン、酸味が強く、色の濃い品種なので、別の品種とのブレンドが多め。
メルローMerlot種
カベルネ・ソーヴィニヨンCabernet Sauvignon種
これらのボルドー品種もバライエタル(単一品種)ワインとして生産されていることが多く人気。
ピノ・ノワールPinot Noir種
ここ数年、バライエタルワインとしてこの地域で生産されるようになった品種。この品種が持つエレガントさを残したワインに仕上がるものもあれば、野性的な雰囲気を持つ違うワインのような感じがするものまでいろいろ。
フランス南部産ワインの主な産地
・ラングドック・ルシヨン Languedoc-Roussillon地方
広大な地域で、様々なブドウ品種から、様々な地理的条件や気候の下、数え切れないほどのスタイルのワインが作られています。産地を表す各ACの中で高品質のものを表すワインに、以下の2つの名称をラベルに記載することが許可されています。(2011年より)
格付け
グラン・ヴァン・デュ・ラングドックGrands Vins du Lanuguedoc(上質)
グラン・クリュ・デュ・ラングドックGrands Crus du Languedoc(最上質)
呼称ワイン
―地方名称AC
ラングドックLanguedoc AC
コトー・デュ・ラングドックという総称名称をこのように簡素化、また地域も拡大され、この名称がついているワインは、フランス南部の広範囲のどこかで作ったブドウを原料にして作られたワインとなります。
―主な地域名称AC
ミネルヴォワMinervouis AC
多様な地理的条件や気候で品質にバリエーションがあります。この中にある別のAC、ラ・リヴィニエールLa Liviniereはこの地域で最高とされます。
コルビエールCorbieres AC
広大な産地。その中にある別のACをもつブトナックBoutenacの評価が高くなっています。
フィトゥーFitou AC
フルボディのスタイルと軽めなものとがあります。
コート・デュ・ルシヨンCotes du Roussillon AC
山がちな地理的条件と気候条件から、凝縮したワインができます。
コート・デュ・ルシヨン・ヴィラージュ Cotes du Roussillon-Villages AC
上記、コート・デュ・ルシヨンの北部にある最良のブドウ栽培地でできたワイン。
コトー・デュ・ラングドックCoteaux du Languedoc AC
広範囲で多種多様なワインがあり、ラ・クラープLa Clapeではフルボディの赤、ピック・サン・ルーPic Saint Loupでは山麓上部で熱心な生産者が凝縮したエレガントな赤ワインを作っています。
―地ワイン(IGP)
この呼称で好きなように作っていたときもありましたが、今世紀に入ってからこの地の地理的、気候的条件を利用して、ブドウ品種名をラベルに記した高品質でお買い得なワインが作られています。
ラベルにはこの地域の総称 ペイ・ドックPay d’Oc 、またはVin de Pays (du, des, de)~地名(例:Vin de pays de l’Aude, Vin de pays de l’Hérault, Vin de pays du Gard)などのように生産地名(例の3つは最後に県名)がついています。IGPの格付けにもかかわらず卓越したものもあれば、さらに努力が必要なものもあることは否めませんが、日常用のデイリーワインという位置づけでは非常によくできています。
・プロヴァンスProvence地方
この地方の名産はやはりロゼワイン。リゾート地のリビエラに来る人たちのために作られた一般的なものが有名ですが、近年は本格的なワインを作ろうという生産者が増え、カベルネ・ソーヴィニヨンCabernet Sauvignon種のブレンドなどの赤ワイン、地元品種の白ワインでいいものが作られ始めています。
コート・ドゥ・プロヴァンスCotes de Provence AC
最大のACでほとんどがリゾートで飲まれるロゼワイン。
バンドルBandol AC
ムールヴェードルMourvedre種から作った赤ワインで、力強いタンニン、濃い色のフルボディのワインで数年の瓶内熟成を経たのち、複雑な果実香味を持ち合わせたワインとなります。ワイン愛好家に飲んでみたい!と思う人が多いとか。
あこがれのフランス、素顔のフランス、両方に出会えるフランス南仏のワイン
「南仏プロヴァンスの12か月」で多くの人が知るところとなった南フランス。かわいらしい南仏のイメージは世界中でも今でも人々のあこがれの地方のままです。そういう南仏の雰囲気と、実はとてもフランス人の頑固さがにじみ出るできごとに出会うことの多いこの地域。本当のフランスに出会える地域と言ってもいいでしょう。実際、訪問することはできなくても、どんなところでどんな人がこのワインを作ったのかなあなどと考えながら、ここのワインを通して脳内南仏の旅を楽しんでみるのも楽しそうです。きらきらしたリビエラのようなワインもあれば、頑固一徹な力強いワインがある、それもまた南フランス風と言っていいでしょう。今世紀に入って品質が上がり続けている南フランスのワインは、気軽に飲めるデイリーワインがたくさん出ていてとってもお勧めです。