慣れないとわかりにくいような気がするドイツワインのラベルですが、ワイン法が確立しているため、コツを抑えれば逆にボトルの中身が想像しやすいともいわれています。ここでは、ラベルに表示される地名とその表示の仕方について解説します。
地理的な区分
ドイツのワイン法では、ブドウ畑の等級ごと細かく分類されています。これらがラベルに記載されています。
―アンバウゲビートAnbougebiet
上質ワイン用に指定された13の栽培地域で必ずラベルに表示されている。
このアンバウゲビーテ(複数形はAnbougebiete)の中で主要なところをこのあとご紹介します。
―ベライヒBereich
アンバウゲビートの中にある地区で、通常ラベルにべライヒ名も表示されます。
(例:Bereich Bernkastel ベルンカステルというべライヒ)
―アインツェルラーゲEinzellage, グロスラーゲGrosslage
アインツェルラーゲは単一ブドウ畑、グロスラーゲはいくつかのブドウ畑の集合体を表します。格付けがQbAワインの生産者はブドウ畑名をラベルに表示できます。通常ブドウ畑名は村名の後ろ。
(例:Forster Ungeheuer= Forster村のUngeheuerという名前のブドウ畑)
上質ドイツワイン 主なアンバウゲビーテ(栽培地域)
モーゼルMosel
リースリングRiesling種。モーゼル川の中流あたりに、多くの単一ブドウ畑やピースポートPiesport村とベルンカステルBerncastel村という村に多くの単一ブドウ畑がある上質ワインが生産地。この地域のリースリングは、アルコールが低めのライトボディ、酸と糖分のバランスが絶妙なワインになります。(ピースポート村にあるミヒェルスベルグMichelsbergはこれらのワインとは違う一般大衆ワイン。)
ナーエNahe
繊細なモーゼルよりややふくよかな白ワインがリースリングRiesling種から作られ、とくにシュロスベッケルハイムSchlossbockelheim村、バート・クロイツナッハBad Kreuznach村のワインが優れています。また、辛口、赤ワインの生産も盛んになりつつあります。
ラインガウRheingau
ほとんどがリースリングRiesling種でその80%以上が辛口。ミディアムボディで芳醇なモモの香りがする白ワイン。ヴィズバーデンWiesbaden、ヨハンイスベルクJohannisberg、ガイゼンハイムGeisenheimなどが有名。またドイツ最高の甘口ワインはこの地方で作られています。シュペートブルグンダーSpätburgunder種から作られた赤ワインも、ドイツではこの地が発祥。
ラインヘッセンRheinhessen
主にミュラー・トゥルガウ種、リースリング種から白ワイン、シュペートブルグンダーSpätburgunder種から赤ワインも多く生産されています。ニーアシュタインNierstein、ナッケンハイムNackenheim、オッペンハイムOppenheimという地域でドイツで最もフルボディのリースリングRiesling種を生産。
ファルツPfalz
リースリング種他、各種の白ブドウ品種から優良な白ワインが作られているほか、赤ワインも多く生産されている地域。ヴァッヘンハイムWachenheim、フォルストForst、ダイデスハイムDeidesheim、ルッパーツベルグRuppertsbergという地区に最良のブドウ畑が広がり、リッチな風味の白ワインができ最近は辛口ワインが多くなっています。
バーデンBaden
アルコール度の高いフルボディのワインが主。評価の高いワインはヴュルテンベルク Württemberg 、カイザーシュトゥールKaiserstuhl、トゥーニベルクTunibergのベライヒに集中しています。またシュペートブルグンダー種から作る赤ワインの評価が高い。
フランケンFranken
シルバナーSilvener種から作る白ワインが主。いくらかの上質な白ワインは辛口で芳醇な風味を持ちますが、ほとんどは素朴な品質のワイン。
食事と「一緒に」楽しめるワインを!
ドイツワインと言えば、ほんのり甘く飲みやすいものから、デザートワイン向けの甘いものが有名で、特に西洋の食事習慣においてなかなか食事の邪魔にならないワインは見当たらないといわれてきましたが、近年、国を挙げて食事中に飲める辛口ワインの生産に取り組んできました。その結果、食事と楽しめる辛口白ワインはもちろん、赤ワインの生産量も増え国際的な評価も上がってきており、イギリスの非常に影響力があるワイン評論家ジャンシス・ロビンソン氏によると、今後ますます注目される産地になるとのこと。日本に入ってくるのはまだまだリープフラウミルヒLiebfrauenmilchと言われる飲みやすいほんのり甘いドイツワインがほとんどかと思いますが、新しいタイプのドイツワインもぜひ試してみていただきたいところです。